たとえ足が折れようと、女は旅へ行く
8月11日、骨を折りました。
左足の人差し指と中指の付け根。
別段大した事件でもないので、骨を折った詳細については割愛しますが、今回のことでわたしは一種の悟りを開きかけました。
えぇ、まじで、痛すぎて。
折った瞬間は非常に痛かったのですが、まさか骨が折れているなんて露ほども思わず、その日の晩は保冷材で足を冷やしながら眠りにつきました。
起きた。
痛すぎて途中目が覚めてしまうくらい。
そうでした。わたし痛みに弱いんですよ。
我慢が出来ないんです。
でもね、このときもまだ折れてるなんて思ってもいませんでした。
捻挫だろうってくらいにしか思っていませんでした。
翌日曜日、起きて痛くてまぁびっくり。
歩くと痛いし、階段のぼっても痛いし、階段おりても痛い。
でもこの日、わたし無謀にもキャンプギアとか買いにいこ~って出かけました。
足引きずってぴょこぴょこ跳ねながら、意味があるか分からないけどせめても、と以前捻挫したときに使用していたサポーターで足首固定して。
痛みに弱い女ですからきっと人より大げさに痛いんだろうって、そんな程度にしか思っておりませんでした。
明日も痛いようだったら病院いこうかなってそれくらい。
当たり前ですが痛かったです。折れてるんだからそりゃ痛い。
整形外科のお医者様はおっしゃりました。
「随分と器用な折り方しましたね」
よくわかりませんが、こんなつま先の真ん中だけ折るなんて器用なことなんだと。
笑ってんじゃねぇ!!痛いんじゃ!!!
と心中穏やかでないことを考えつつも、レントゲン撮って湿布と痛み止め出してもらって松葉杖借りて、折れてたことにショックを受けながら松葉杖捨てて帰ろうかと思いました。
松葉杖ね、案外難しいものなんですよ。
手首と掌がとってもペイン。脇に体重掛けないようにしていても当たるものだから、こっちもペイン。
そしてベリーホット。
今年は記録的な猛暑ですから、普通に歩いていても危険なレベルというのに、まさか松葉杖ついてよっこらよっこらしていたら暑いに決まっている。
まぁ別に後遺症が残る大けがというわけでもありませんし、1か月ほど不便なだけでしょう。
そうは思いつつも、ひとつだけ気がかり。
キャンプ場予約してんだよなぁ……
そう、左足つま先ポッキンする一週間前に。
上大島キャンプ場、相模川のほとりにある良いキャンプ場です。
というか、なんでしょう、橋本の周辺は人が良い。
みんな親切で親身。
その上大島キャンプ場に行く予定だったんです。
足を折ったちょうど一週間後に。
女は考えた。
原付で信号待ちのときに足ついたら痛くね?
女は悩んだ。
行きたい。
女は金曜日まで様子を見ることにした。
なんといっても橋本からバスも出ていますし、最終的には自走じゃなくてもいいでしょう、と。
女は気づいた。
行かない、という選択肢が自らの中で消えていることに。
事実、行きました。
原付で。荷物抱えて。
そもそも、仕事で出歩くから松葉杖あったほうが楽だよって借りただけであって、歩けないわけじゃないのですから。
怪我をしてから3日目くらいは痣と腫れで大変なことになっておりましたが、前日金曜の夜にはそれもなんとか、ほんの少しはおさまりまして、能天気女はいざいざと橋本へ向かったのでありました。
上大島キャンプ場があるのは相模原市緑区。
上大島キャンプ場 : アウトドア : 遊ぶ、体験する | 一般社団法人 相模原市観光協会ホームページ
デイキャンプの多いところですが、乗りに乗ったピークシーズンですから仕方ありません。
キャンプ場で聞く子どもの声は悪くないものです。
大学生の「ウェーーーーイ」は許しませんけれど。
居住地からおよそ50キロ、朝の8時に出発して10時過ぎの到着です。
今回も徒歩キャンのお連れさん、合流は10時半頃、待ち合わせのタイムロスもなし、左足の骨折部はほんのり痛いけれど問題なし。
デイキャンパーたちの間をすり抜けて、川を眺められる少し開けた場所へ。
本当は木陰が良かったのですが、そちらはすでにデイキャンパーにつぐデイキャンパーで埋まっておりました。
木陰のほうがペグ刺さるからタープ立てやすいんだよぉ……
仕方ありません。
川がすぐそこですから、ペグが深く刺さらない箇所は大きな石で押さえました。
相変わらずこじんまりしたサイトの設営、それなりに左足が痛くて思っていたより苦戦しました。
抜ける青空が気持ち良いです
日差しに輝く水面も趣の塊。
ものすごい数の釣り人で埋まっておりまして、なんとかその隙間をぬって撮りましたが、油断するとまぁ写りこみます。
わたしは青の上杉、お連れさんは赤の武田。
この話をお連れさんにしましたところ、「え~!やだ、武田嫌い」
わかる、わたしは上杉が好き。
謙信の夢女子ですからね、景虎様とか言っちゃいますから。
さてさて、設営も終えたところで、次にやることといったらひとつ。
風呂!温泉!風呂風呂風呂!温泉!
ええ、近くにありましてね、マイモペッドくんで10分、15分といったところ。
お連れさんはここでもバス。
左足折れてますけども、お風呂は禁止されてないので入ります。
遠出したら大きい風呂に入らねば。
そういうものです、これは日本人のDNAに組み込まれた性。
大きいお風呂に魅力を感じてしまうものなのです我らは。
https://www.yurakirari.com/yura/sagamihara/
相模・下九沢温泉 湯楽の里
お昼ご飯はここの食事処で。
怪我を早く治すためにもりもり食べねば。
豚カツ定食。
ここのお風呂ね、なかなかに楽しかったです。
いろいろありました。
まずね、やたら水圧が強いジェットバス。
これ、公式だとアトラクション風呂といいまして、やばい、水圧がやばい。
座った状態、寝転がった状態、いろいろな体勢で全力水圧を楽しめますが、これ肩コリにめちゃ効く。
そして楽しい。
次にシルク風呂。
最初は人がいっぱいではいれなかったんですけども、人気の理由がわかります。
するんするんのつるんつるん、どことなくトロミがあるのか、保温効果で汗がすごい。
内湯、露天あわせても、このシルク風呂がいちばん汗が出ます。
腰掛け湯。
石段のような、長椅子のような、腰掛けたままじんわり背中にお湯を感じる地味なやつ。
いえ、ほんと、見た目は「なんだこいつ!」とちょっとテンション上がるんですけども、思ったより地味。
だけど、どうしてか、これがまた気持ちいい。
シルク風呂に入りながらチラリとお見かけした高齢のご婦人が、まるで中世の絵画のようなポージングをとってらっしゃいました。
そして電気風呂!!!!
こいつ!!!コイツ!!!!!やばい
なにがヤバいって大人しそうな顔してアトラクション風呂より高刺激なところですよ!
最初はね、そうでもないんですよ。
一見ふつうなんです。やたら体に気泡がつくくらい。
ところがどっこい!電気が流れているところに行った瞬間にアーーーーーーー!!!
すごい。
電気すごいィ!筋肉にィ!身体の芯にィ!ビリビリアーーーーーーー!!!
身体がァ!こうッ!アーー!うまく、うごかせな!アーーーーーーー!!!
気持ちいいのかよくわからないけどテンションはぶちあがります。
となりのご婦人方は、まるで普通の風呂につかるように、目を閉じて全身を弛緩させて楽しんでおりました。
ここで一句
電気風呂 兵どもには ただの風呂
露天もなかなか良いものでした。
まず岩風呂。
循環式の天然温泉。温度はちょっとぬるめ。
岩風呂と源泉の湯には屋根がなく、空を広く眺められるのも気持ちが良い。
源泉の湯は名のとおり、源泉かけ流し。
こちらはなかなか高温でした。
壺湯。これもテンションぶちあげ風呂です。
こちらはアトラクション的と言うより、見た目の雰囲気が良すぎる。
ざぱざぱとかけ流しの源泉が注がれて、常になみなみ溢れている大人がひとり、ふたり入れるサイズの壺がふたつ並びます。
みなさん、やはりおひとりずつ入浴されるご様子。
だよね、何人も詰めて入浴したら雰囲気台無しよね。
同時にふたりしか入浴できないため、混雑時はタイミングが合わないと入れないかもしれない……
横に湯冷ましのためかベンチが置いてあるので、どうしても入りたい方はここで待つのも良いかもしれません。
もうさぁ、こんなのにひとりでどぽーん!ざぱーん!って浸かるなんてテンション上がるに決まってるでしょう……
もうひとつ、寝転び湯。内湯にあった腰掛け湯の寝転びバージョン。
えぇ、言わずもがな。石の上に寝転ぶと、じんわりと背中に温かい湯。
見た目以上に地味。でもなぜか気持ちいい。
こちらは全裸で寝転ぶことになるので、身体の前面にタオルをかけておきましょう。
恥ずかしくないならいいですけど!わたしは恥ずかしかった!!
サウナも楽しそうでしたが、さすがにそこまで高温にすると左足が痛みそうなのでサウナは断念。
塩サウナ、やってみたかった……
温泉入ったら牛乳って決まってるんですよ、法律で。
写真撮る前に飲みましたけども。
飲み干すまで気づきもしなかったカウ。
この湯楽の里、二階の休憩スペースでなぜか漫画が読めます。
ほんのり薄暗いお座敷の休憩スペースでおじ様たちがぐうすか寝ている様子にはなかなか趣がありました。
お風呂で遊ぶこと2時間半、3時間。
だいぶ長いこと楽しみました。
バスの時間の関係で、お連れさんを置き去りににして先にサイトへ戻ることに。
女はふと思う。
温泉が実際に体に良いのかは分からぬ。
しかし、こうして楽しいことがあると怪我の痛みもそうたいしてストレスにはならぬ、と。
お連れさんを待つあいだ、川を眺めてコーヒーを飲んでうとうとする。
最高に至福の時間。
さて、時刻が夕方に突入したのなら、ここからは大人のための時間でしょう。
はしゃぎ、走り回る子どもたちは疲れはじめ、家族連れのデイキャンパーたちは帰り支度を始める時間。
彼らが集合写真を撮る横で、女は炭をおこす。
バーベキュー台なんぞ重たくて持っていけないので、今回も焚火台での調理です。
そう!!焼き鳥!!!!
お連れさんが持ってきた冷凍の焼き鳥(解凍済み)、味付けはガーリックソルト。
ハーブソルト、ガーリックソルト最強。
炭火で焼くとなんでもかんでも美味しくなる不思議。
焼き鳥、きのこ、高いウインナー。
大人ですから、ウインナーは値の張る美味しいものを。
何時ごろまでお酒を飲んでいたか、だいぶ酔っぱらっていたのでよく覚えていませんが、なんだかんだ火が落ち着くまで起きていました。
うん、幸福度の高い時間でありました。
段ボール燃やしたら見事に燃え上がりまして、テンション突き抜けました。
火遊びはくれぐれも気を付けて。自戒。
こちらは怪我をしてないほうの足。
翌日は帰るだけ、なわけがない。
これ食べないと帰れないホットサンド!!
ハムエッグサンドとポテサラサンド!!!
写真撮る前に一口食べた。
ホットサンドメーカーは正直重たいし、なくても困らない。
でもべらぼうに旨いものが作れちゃうんですよ、これ。
しかし女は自分勝手な人間であった。
ホットサンドメーカーはお連れさんの所持品であり、自身ではもっていかぬ。
自分の持ち物でないからこそ、心より楽しめるのである。
徒歩キャンもキャンツーも、共通点と言えば荷物をなるべく少なく軽くしていくこと。
しかしね、そのなかで、たとえ重たくても、たとえ邪魔でも、どうしても譲れないものが時々ある。
わたしの場合は椅子なんですけども。
そもそも、お連れさんはこのホットサンドメーカーをフライパンにしたり野菜むしたり、結構活用してるから良いのかもしれない。
写りこんでいるのは怪我をしているほうの足。
そんなこんな、キャンプ中の大半は足の痛みなど忘れておりました。
まぁ、帰路、一方通行に迷い込んでしまってモペッドくんを引き回すのでだいぶ痛かったですけど……
電車の席を譲ってくれる、世界は存外優しいのだと、女は左足の痛みにほんの少しの学びを知った。