時速30キロとことこの旅

徒然自転車に乗っていた女が体力に限界を感じて原動機に魂を売りました。

【伊豆大島トウシキキャンプ場】随分楽しい冒険だったと女は振り返る

先日の台風で大きな被害を受けた伊豆諸島。

大島に、名物キャンプ場がある。

 

暴風の鬼!トウシキキャンプ場!

 

楽しかったなぁ。

愛車とともにフェリーで海を越えた。

普段は一泊二日のキャンプだが、せっかく大島まで行くのだから、と二泊三日の旅になった。

東京汽船のフェリー、座席にいくつか種類がある。

まるでホテルの一室みたいな客室から、席なしまで。

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水に浮かぶ鉄の塊。浪漫の塊、さるびあ丸

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このキャプチャだけでワクワクする

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徐々に遠ざかる東京の夜景。働く都市の夜景は美しい

行きは少し贅沢に特2等室。

二段ベッドが細長い客室にずらりと並んでいる。

もちろんカーテンが締まるので、視覚的なプライベートは守られる。

ブランケットなどはあるが、マットは硬いため、わたしはこのブランケットを敷布団にしてシュラフで就寝した。

 

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海を渡る切符

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そば子は上段、お連れさんは下段

帰りは2等椅子室で。

フェリーでの旅感は薄れるが、十分に楽しかった。

とくに、思い出とともに味わうプリンは絶品。

懐かしい味がしました。

 

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夜景と潮風と、波を切る音も肴

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食堂のぬるい蕎麦がまた旨い

ちなみ先に述べた「席なし」とは、フリー乗車券という名で発売される乗車券のこと。

2等席が完売したときのみ発売されるようで、シーズンが乗りに乗ったピークではこのフリー乗車券ですら溢れかえるそう。

通路などにシュラフやマットで客が転がっている様子も、いずれは見て見たい。

 

早朝に到着。

波浮港と岡田港があり、基本的には岡田港からの乗降となる。

ただ、海が荒れていたりと、なにがしかの理由で波浮港になることもあると、島の方に教えて頂いた。

 

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朝日が目に染みた

わたしが宿泊したトウシキキャンプ場は、波浮港に近い。

晴れていようが、雨だろうが、曇りだろうが、天候関係なくとにかく風が強い。

雨予報だったのでタープを張ろうと思っていたのだが、飛ばされたら悲惨なので断念。

 

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この後ガッチリ地面に固定

テントを張るときに何度かソロドームがひっくり返った。

中に荷物を置いてもひっくり返った。

 

どうでもいいことだが、お連れさんが謎の位置に突き刺したペグにつっかけて、わたしもひっくり返った。

恥ずかしかった。

 

キャンプ客はわたしたちと、もうひとりソロキャンパー。

飛行機に乗ってきたそうだ。

なるほど、徒歩ならその手もあるわけか。

 

彼は50ccのレンタルバイクで島を回っていた。

普段はバイクでキャンツーをしているらしい。

 

設営を終えたら、208号道路をとことこ走って大島町・元町方面へ。

ミニベロでのんびり走るお連れさんを待ちながら、景色を楽しむ。

急ぐ旅ではないので、晴れているうちに景色を焼き付けなければ。

 

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大人しい顔して凶暴なトウシキ

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ゆっくり走るためにはもってこいの道

地層切断面。

なんだか恐竜でも出てきそうな壮観。

 

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恐竜には会えなかった

大島町では寿し光さんの海鮮丼を食べ、愛らんどセンター御神火温泉という素敵な名称の温泉施設でのんびり湯に浸かる。

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翌日もお世話になりました

サンセットパームビーチを走り、大島空港そばのぶらっとハウスでアイスクリームを味わう。

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そば子は乳製品を心から愛している

牛乳が旨いわけだ、牧場があるんだもの。

 

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店内の雰囲気も最高

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美味しくないわけがない

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海と愛車の相性が抜群である!なんとかわいらしい

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このままどこまでも走っていきたくなる


初めての長距離巡航に疲れ果てたお連れさんを、歌いながら励まして夕日のなかキャンプ場へと戻っていく。

 

大島はサイクリストと釣り人の島。

もちろんスポーツバイクでなくとも、レンタサイクルで島を巡るひとも多い。

もし自走でぶらぶら巡るなら、ぜひサンセットパームビーチを走って欲しい。

 

できれば愛車をつれて。

海の青に、あなたの愛車はきっとよく映える。

天候と時間があえば、美しい夕日とも出会える。

 

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許される限り眺めていたくなる

自身の目で見ると、涙が出そうなほどに美しかった。

 

明日に備え、この日は焚火を囲むこともせず、眠りについた。

翌日、地獄が待っているとも知らずに。

 

 

二日目は三原山へ。

この日は予報通り雨、さらに濃霧。

モペッド君はお留守番、お連れさんと共にバスでゆく。

 

案の定、山からの展望はこの通り。

 

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数メートル先も見えない

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まるでファンタジーの世界。これはこれで楽しいのが旅

食堂で食べた明日葉天のざる蕎麦。

いいなぁ、好きなんですよ、こういう昭和の空気が残る空間。

 

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プラスチックのざると猪口がまた良い

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水はセルフ

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このポスター、欲しいのだが

せめてもう少し霧がおさまれば……と思うも、今日のお天道様は天邪鬼。

裏砂漠は次の機会にとっておくことになった。

 

その代わりに動物園へ。

大島公園 動物園。

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生憎の雨、客はほぼわたしたちだけ

入園料は無料、見ごたえも十分。

目の前で見れる孔雀、なぜか寄ってくるエミュー、絶妙に遠いキョン

 

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孔雀って大きいんだなぁ

八丈島キョン

 

大島だけど。

海を泳いで渡ってきた、という説のある大島のキョン

思いのほか小さい。

なんで写真がないんだ……

かわいかった。

 

 

だんだんと雨足が強まる中、わたしの身体も雨に浸食されていく。

雨の12月。寒いに決まっている。

身体の芯まで冷え込み、なんとか波浮港付近に戻る。

動物園でのんびりしていたせいで、すでに辺りは真っ暗であった。

 

大事件が起きた。

正直、トウシキの風を舐めていた。

 

そうだった、風というのは雨とタッグを組むと最強のデーモンと化すのだ!

 

女は思う。

昨日、風で転がるテントに笑う女の胸倉をつかみたい。と

オマエ、明日の夜に地獄を見るぞ、と。

 

風で抜けたペグ。

はためくフライシート。

テント内へ殴りこむ雨。

湿ったダウンハガー。

このあたりから写真がほとんど残っていない。

そんな余裕がなかったのである。

 

12月、冬、夜。

 

女は思った。

死ぬんじゃない?これ

 

いまこうしてブログ記事を書いているのだから、もちろん死んでなどいない。

生きている。

女はいまも自発呼吸を続けている。

 

トウシキキャンプ場は無料キャンプ場であり、売店は存在しない。

あるのは水場と東屋と和式トイレのみ。

 

命綱となる薪を探す前に、とにかく夜ご飯。

ガクガクしながら食べた、大関寿司さんのお寿司。

生き返る心地だった。

 

大島名物・べっこう。

唐辛子醤油につけた魚の切り身、店によって味が違うのである。

食べ比べてみるのも楽しいだろう。

わたしは土産にべっこう醤油を買って帰った。

 

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落ち着いた良い店だった

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大島名物・べっこう寿司

でも、やっぱり夜のことが心配だった。

火でもなければ濡れた服は乾かない。

湿ったシュラフと濡れた服では、一晩のうちに心臓が止まりそうである。

 

大関寿司を出るころには有難いことに雨もやみ、とにかく這いずるようにして薪を求める。

元町のカフェで教えてもらった、薪を置いていそうな場所。

 

勤労福祉会館!

 

ありました。

ずぶ濡れの服で薪を求める女ふたりを見て、施設の方も目を丸くしていたっけ。

その節はご親切にどうもありがとうございました。

 

焚きつけ用に、と大量の新聞紙も頂いた。

 

もちろん、ナタで薪を割る余裕もなく、大量の新聞紙で薪をゴォゴォ燃やす。

たぶん、いままでで一番、焚きつけが早かったと思う。

 

女に、火の神が宿った瞬間でもあった。

 

猛スピードで椅子を組み立て、濡れたものを全力で乾かす。

わたしよりもお連れさんの被害が大きかった。

 

ゴウ…と燃え盛る火で靴を、服を、全てを乾かす。

豪風で、すこしでも椅子を離れると、椅子すら薪になる。

 

バタバタしているときに、焚火の上にスポっと覆いかぶさったわたしの椅子……

右太もも近くに空いたふたつの穴は、ある意味勲章である。

 

波浮港見晴台目の前にある、みはらし休憩所。

ここのおじさんも、すごくすごく親切だった。

食べな、と渡してくれた牛乳煎餅が、とても美味しかった。

 

勤労福祉会館の施設員さんも、カフェのお兄さんも。

みんながとても優しかった。

 

寒いけど、あたたかった。

お陰で、わたしたちはこうしてまた、楽しくキャンプ遊びを続けている。

 

 

三日目、この日もあいにくの曇り時々雨。

岡田港で、また海鮮丼を食べた。

 

初めに書いたプリンは、そこの土産屋さんで買ったのだ。

 

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牛乳、また買った

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帰りたくない、と本気で思ってしまった


 

キャンプ遊びは大変だ。

なんといっても所詮野宿なのだ。

冬の寒さは命を奪う危険性もある。

幼い子がキャンプ場で行方不明になってしまった悲しい事件もある。

焚火の温かい火、美しい熾火、バーベキューの炭、1000℃を超す温度を、もし裸足で踏んでしまったら。

夏は楽しい川遊び、浅瀬は穏やかでも、人間の力では抗えない急流箇所が突然現れる。

 

 

アウトドアを舐めてはいけないと、心底思った。

それと同時に、本当に本当に、楽しい旅となった。

 

台風の被害で、いままさに伊豆諸島は復興でおわれていることだろう。

非力なわたしではなにも出来ない。

ボランティアに行ったところで迷惑をかけるのがオチだ。

 

だから、女は思う。

復興が落ち着いたときに、ぜったいにまた大島に行こう。と

そうして、たくさんたくさん、お金を落とすのだ。

そうして、またブログを書こう。

 

女は思う。

次はトウシキじゃないところに泊ろう……